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道平はそのまゝ夕食を招よばれて、ゆつくり腰を落ちつけていたが、夜ふけ近い頃になつて、ひよつこり
今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。
しかし、さういふ身体の忙しさより何よりこたへたものは、房一にとつては肉親の大病を診察するといふはじめての経験だつた。
「今、あんたの便をしらべてみたがね」
今度は、徳次も完全にびつくりしてしまつた。彼のきよろりとした眼には、どこか少し先きで火事があると聞いた時のやうに、何だか落ちつかない、興昧ありげな色が浮んでいた。
「入りましたよ。それがねえ、穴の中は苔が生えたやうな、水たまりもあつてね、やつとこさ奥まで行つてみたんだが、まはりの土はぼろぼろ落ちるし、何のことはない洞穴でさあね、――それでも連中はあつちこつち突ついてみてたがね、含有量はまあもつと試掘してみなけりや判らんさうですよ」
「あれは本当ですかね、相沢さんが訴訟を起したと云ふのは?」
「わたしはね、こいつは割れさうだなと思つたもんでね」と、笏で自分のはいている木沓を指して、
「早く早くつたつて、もうお支度はちやんとできてますわ。あなたが遅くかへつて来といて――」
「連れっ子をして行ったです。その子供がまたチブスになって、……」
「何を云うとる。すまじきものは宮仕へ、といふぢやないか」
「一つ着て見せたらどうです?高間さんにはきつと似合ひますよ」
「何をするかつ」