貴方の見ているドメインは

ドメイン www.hztech.net

このページについて

    今泉はうつむき気味に、すぐ前に坐つている庄谷の背中を見つめていた。するとその肩に一本の糸屑がくつついているのに気づいた。彼はそつと手を伸してつまみ上げた。庄谷はうしろをふり向いた。その白味の多い小さい目で無意味ににやりとした。そして又元の眠つたやうな無表情にかへつた。

    「おとうちやん、どこへ行くの」

    徳次は気が抜けたやうに、口のあたりをもごもごさせるきりだつた。

    「ですが、何とも手のつけやうがない」

    と、云つた。

    房一は手足を洗ふと、簡単に診察着をひつかけて表へ廻つた。

    「どうしなさつた」

    「どうだ。起きられるか」

    「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。

    むかしからおれとこの人とは仲よしだつた――それは押しかくすことのできない悦ばしさだつた。

    「君に云つとくが、何んだぜ、小倉組の者なんかにかゝり合ひをつけちやいかんぜ」

    「大石の御老人は見えんやうだな」

    「ねえ。はやく」

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40